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「キミと居ると、自分をコントロールできなくなるんだ」 真夜中のタクシーの中で私の体をまさぐりながら、彼が言った。 そんなの私の知った事じゃないわ。口説き文句としても言い訳にしても及第点のあげられるセリフじゃないわね。 心の中でつぶやいて、冷めた目で彼を見下ろしながら、私はスカートの中で蠢く指を止めようとはしていなかった。 父親が反対するから、というなんとも納得しがたい理由で一方的に別れを告げられてから1年半が経っていた。 そして私は彼が先月親の勧める女性と婚約したのを知っていた。 タクシーを降りて、人通りのない路地を歩く。昔みたいに、腕を組んで。 不意に止めてあった車の影に引きずり込まれ、抱きすくめられる。 壁に押しつけられて膝を割られ、首筋を強く吸われながら私の体の一番深いところに彼の指を感じる。 私の体は、確かに濡れていたと思う。 このひとは、まだ私を自由にできると思っている。 彼の肩越しに春霞に煙った灰色の空を見上げながら、気づかれないように私は唇の端を吊り上げた。 送別会での久しぶりの再会。花束を私に差し出し、 「送っていくよ」と申し出た彼に、私は幾ばくかの期待をしていたのだろうか。そうではない。 わたしは、復讐の機会を待っていたのだ。 「じゃあ、元気で」 と何もなかったような顔で握手を求める彼に、わたしはバッグの中からあるものを取り出しながら言った。 「これ、今の彼なの。かっこいいでしょう?」 にっこり笑って1枚の写真を見せる。 一瞬のうちにこわばる顔。 そう、それよ。その顔が見たかったのよ。 どうかしら?今でも私は自分のものだと思っていたでしょ。 そんなわけないじゃない、おめでたいね。 許してなんかいないのよ。 何もわかっていないのね。 ひくん、と彼の喉が鳴る。 何か言いたいの?それとも泣きそうなのを我慢しているの? もうどっちでも良いけれど。 振り向きもせず、よろけながら大通りへ帰っていく彼の背中を見送りながら、笑みが零れて止まらない。 わたしのなかで、確実に一つの何かが終わった気がしたから。 酷い女?そうかな。 向かってきた刃物を逆手にとって相手に突き刺してやっただけだよ。 正当防衛ってやつじゃないかしら。 MIKO |
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